一陽来復

二十四節気では「冬至」の頃──、
空気が冴え渡り、山々には新雪が積もり始めます。

冬至は「日短きこと至る(きわまる)」という意味があり、
北半球においては一年で最も太陽の位置が低いため、
昼が短く夜が長くなる日を指します。

冬至を境に弱まっていた太陽の力が甦ることから、
太陽が生まれ変わる日と考えられ、
「一陽来復(いちようらいふく)」とも呼ばれています。

古より暦の起点となる、重要な節目とされてきた冬至。
陰が極まり再び陽の力が兆すことから、
運気が好転する最良の吉日とされ、
厄祓いをして一年の無病息災を祈る慣わしがあります。

冬至の縁起物として知られている柚子。
冬至は「湯治」、柚子は「融通が利く」という語呂合わせから、
柚子の実を湯船に浮かべた「柚子湯」に浸かると、
その強い香りによって邪気が祓われ、一年中健康で過ごせると言われています。
また柚子は結実するまでに長い年月がかかるため、
長年の苦労が実るようにとの願いを込める意味合いもあるのだとか。
端午の節句の「菖蒲湯」や土用の「丑湯」などと同様に、
穢れを祓い清めるための禊(みそぎ)の名残とも考えられています。

冬至には「ん」が付くものを食して「運」を呼び込む、
「運盛り(うんもり)」という風習があります。
なかでも「ん」が二つ付く南瓜(なんきん)、人参、蓮根、銀杏、金柑、
寒天、饂飩(うんどん)は「冬至の七種(ななくさ)」と呼ばれ、
運を呼び込む縁起担ぎの食材とされるだけでなく、冬場に必要な栄養素を補う役割も。
「ん」は「いろはにほへと」の最後の音であることから、
物事が終わり新たによい運気が巡り来るという、
一陽来復の願いも込められています。

冬至、冬中、冬始め──という諺があるように、
暦の上では冬の半ばですが、本格的な寒さはまだこれから。
先人たちの知恵に倣ってしっかりと英気を養い、
健やかに新年を迎えられますよう。