節気便り
2026.03.20
春分
春彼岸
二十四節気では「春分」の頃──、
日ごとに暖かくなり、こぶしや木蓮の花が咲き始めます。
春分とは、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日のこと。
“自然をたたえ、生物をいつくしむ日”として、
国民の祝日に定められています。
春分を中日とする七日間は、春彼岸。
墓参りをして仏壇に花やぼた餅を供えるなど、
先祖に思いを馳せて日々の感謝を捧げます。
春分と秋分は、年に二度訪れる太陽が真東から昇り真西へと沈む日。
この日を中日とする前後三日間を彼岸と言い、
初日は「彼岸入り」、最終日は「彼岸明け」と呼ばれます。
仏教では西方に極楽浄土があると考えられ、
真西に沈む太陽は彼岸へと通じる象徴とされました。
彼岸とは本来「到彼岸(とうひがん)」のことを指し、
“迷いの此岸(しがん)から悟りの岸に渡る”という意味合いがあります。
彼岸の七日間は、仏教で説く「六波羅蜜(ろくはらみつ)」の教えにちなむもので、
布施や忍耐など日々の行いを省みる期間とされ、
中日はその歩みを静かに振り返る日でもありました。
また、古の人びとにとって太陽は農耕を支える神聖な存在であり、
冬を越えて再び力を増してゆく春の光は、
大地の目覚めを告げる標でもあったのだとか。
こうして春彼岸の慣わしは、自然への祈りと浄土思想が重なり合い、育まれていきました。
春彼岸に供える「ぼた餅」は、
この時季に咲く牡丹の花に見立てて名付けられた菓子。
同じ菓子でも秋は萩が咲くことから「おはぎ」と呼ばれます。
古くより小豆の赤色には邪気を祓う力があるとされ、
祝い事や節目の供え物として用いられてきました。
米は実りの象徴であることから餅には五穀豊穣の祈りが込められ、
餅と餡を重ねることで、先祖と自らの心を合わせるという意味があります。
ぼた餅は、牡丹の花のようにふっくらと丸くつくることが多く、
その姿にも季節を映そうとする心がうかがえます。
真西へと沈む太陽に思いを馳せつつ、季節の節目を静かに感じる春彼岸。
祈りを込めて過ごす、穏やかな七日間を。