節気便り
2025.03.20
春分
春彼岸
二十四節気では「春分」の頃──、
日ごとに暖かくなり、こぶしや木蓮の花が咲き始めます。
春分とは、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日のこと。
“自然をたたえ、生物をいつくしむ日”として、
国民の祝日に定められています。
春分の日を中日とする七日間は、春彼岸。
墓参りや仏壇に供え物をし、
先祖に思いを馳せて日々の感謝を捧げる期間です。
彼岸は年に二回、春分と秋分の日を中日とする前後三日間を指し、
初日は「彼岸入り」、最終日は「彼岸明け」と呼ばれます。
彼岸とは“向こう岸”を意味する仏教用語で、
この世のさまざまな苦しみや煩悩を越えて到達する悟りの境地のこと。
これに対し、煩悩に満ちた我々の生きる世は「此岸(しがん)」と呼ばれます。
仏教では彼岸は西、此岸は東にあるとされ、
太陽が真東から昇って真西に沈む春分と秋分の日は、
彼岸と此岸が最も通じやすくなることから、先祖供養が行われるようになりました。
また古来日本には、農作物を育む太陽を祀り豊作を祈願する
「日願(ひがん)」の信仰があり、
これが仏教の教えと結びついたことで、
先祖だけでなく自然やすべての生命に感謝を捧げる、
日本独自の彼岸の慣わしが定着したと言われています。
春彼岸の供え物として欠かせない「ぼた餅」は、
この時季に見頃を迎え、華やかに咲き誇る牡丹の花に見立てた菓子。
餅は五穀豊穣を表し、小豆の赤色は邪気を祓うとされることから、
無病息災の願いが込められています。
また餅と餡の二つを合わせることで、先祖と自らの心を重ね合わせるという意味合いも。
同じ菓子でも、秋彼岸では萩の花が咲くことから「おはぎ」と呼ばれ、
それぞれの花に寄せて、ぼた餅は牡丹の花ようにふっくらと丸くつくり、
おはぎは萩の花のように小ぶりで俵形につくる地域もあるそうです。
暑さ寒さも彼岸まで──。
春風の心地よいこの時季、家族で墓参りをして先祖や故人へと思いを馳せ、
心静かに生と向き合う大切なひと時を。