端午

二十四節気では「立夏」の頃──、
若葉の緑が眩しく、薫る風に夏の気配が漂い始めます。

立夏とは、四季の始まりとなる“四立(しりゅう)”のひとつ。
この日から八月初頭に訪れる「立秋」までが、
暦の上での夏となります。

五月五日は、端午の節句。
鯉のぼりや武者人形を飾り、柏餅を食して、
男の子の健やかな成長を祈ります。

端午とは、“月の端(はじめ)の午の日”のこと。
元々は五月のみを意味するものではありませんでしたが、
「午(ご)」が「五」の音に通じることから、
五の字が重なる五月五日を指すようになりました。

古代中国では、五月は災厄の多い月とされ、
この日に野に出て薬草を摘み取り、厄除けをする風習があったそうです。
日本においては宮中行事として、生薬となる鹿の角や薬草を摘む
「薬猟(くすりがり)」が行われるようになりました。
採ってきた菖蒲や蓬は、沈香や丁子などを包んだ香袋に結びつけ、
五色の糸を長く垂らして「薬玉(くすだま)」にしたのだとか。
この飾り玉は「長命縷(ちょうめいる)」とも呼ばれ、
強い香気で邪気を祓うことから、
柱に掛けて延命長寿や無病息災を願ったそうです。
端午の節句は、別名“菖蒲の節句”とも言われますが、
菖蒲は葉の形が剣を想起させることや、
武を尊ぶという意味の「尚武」や「勝負」に通じることから、
現在は男の子の勝運や成長を願う日として祝われています。

端午の節句に欠かせない「柏餅」。
古くより柏の木は“葉守(はもり)の神が宿る”と言われ、
新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、子孫繁栄の象徴とされたのだとか。
特に跡継ぎを大切に考える武家社会において、柏餅は縁起物として重宝され、
やがて庶民の間でも広く親しまれるようになりました。

青々とした新緑の眩しい初夏。
菖蒲で厄祓いをして夏に向けて英気を養い、
清らかなる端午の祝いを。